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「金利が下落すると株が上がる」
このような言葉を聞いたことはありませんか? この言葉は正しい場合もありますが、相場全体を把握するにはあまりにも短絡的でしょう。今回は、この金利と株価について書いていこうと思います。
Contents
金利とは何か?
金利と株価の関係性を説明する前に、金利とはどのようなものであるかを書いていきます。皆さんは、金利とは何か?ということを説明してくださいと言われたときに、なんと説明しますか? 意外と説明しづらい言葉ではないかと思いまして、ここで改めて定義をするようにします。
金利とは国の信用力を定量化したものである
上記で、金利を説明するのは意外にも難しいのではないかということを書きましたが、私はこのように定義したいと思います。
「資金調達をするときのコストである」と。
通常商売の中で、商品を相手方に譲渡する時には、その代わりとしてお金を渡しますよね。言い換えれば、商品とお金を交換するということです。では、お金を渡すという場合には、どのような交換条件が成り立つのでしょうか?
この時に行う交換というものが、金利ということになります。例えば、国が税金だけではお金が足りないときには、国債を発行して投資家からお金を調達しますよね。この時に、投資家がお金を国に貸し付けて、満期の時に国からその元本だけが返ってくるという契約では、投資家は何のために国にお金を貸し付けたのでしょうか? そのために、金銭の授受という契約についても同様にお金を借りる側はコストを支払わなければなりません。国債の場合には、満期までの間に利息という形で投資家にお金を支払います。支払う利息というものが、発行体が支払うコストであり、金利になります。
この金利というコストは、お金を渡す期間や受け取った先の信用力などの条件によって決まり、不確実性というものによって上乗せされていきます。債券の場合には発行体が、債務不履行に陥ると元本を守れなくなるからです。
例えば、債券の期間が長くなればなるほど、債券の利回りは高くなります。これは、期間が短いものよりも期間が長い方が不確実な点が大きくなるからです。
長期的に金利が下がるのは当然のことである
上記で、金利とは「資金調達をする時のコストである」ということと、「そのコストは調達する側の様々な条件によって決定する」ということを書きました。
ところで、下のグラフを見てください。
このグラフはアメリカの10年国債の利回りをプロットしたもので、1970年付近から示したものです。このグラフでわかることは1980年代前半までは、上昇調子であったが、それ以降は利回りはずっと下落傾向が続いています。
金利は基本的には、「金利は長期で見れば必ず下落傾向」になります。なぜなら、先ほど話した金利の決定条件の一つ、「発行体の信用力」は時間が経過するごとに高くなっていくことが基本であるからです。もちろん、これは企業や個人の話ではなく、国の話です。
みなさんも、この金利は長期で下落するということについて、大筋を理解していただけると思います。しかし、このグラフを見ていると、1980年代前半についてはどう説明するの? という疑問が浮かぶと思いますので、この時の状況を改めて説明します。
この時に何があったのか? それを説明する時にはその前段階から話します。1970年代アメリカはスタグフレーションに悩まされていました。スタグフレーションとは、経済が停滞しているのに、インフレーションが起こることを言います。そして、1977年にカーター大統領が就任すると、その時にFRB議長を務めていたボルカー議長は高インフレを退治するために、高金利政策を行いました。そのため、1980年代前半に限って、このように金利が非常に高くなってしまっているのです。
詳しくは下の記事を見てください。
金利と株価は大きな関係性があるわけではない
さて、本題に入っていきましょう。冒頭でこのようなことを書きましたね。
「金利が下がれば、株価が上がる」と。
しかし、この考え方はあまり正しいとは思えません。
長期的に金利は下がるし、株価は上がる
まずは下のグラフを見てください。
このグラフは、上記の10年債利回りのところに、S&P500の値をプロットしたものです。1980年代前半の金利の急上昇を除いて見た場合、金利は下がる一方であるけれども、株価は上昇する一方ですよね。このように、超長期で株価と金利の関係を見た時には、逆相関の関係があります。
ただ、投資をするにあたって、このグラフはあまり役に立ちません。こんなに長く投資をするのは想定していないでしょう。なので、次は短期的なところを見ていきましょう。
短期的には金利と株価は無関係
上記で、長期間では金利は下がるし、株は上がるということを書きました。しかし、この長期で見ることは運用においてあまり役に立ちません。なので、ここからは短期と中期で株式と金利の関係を見ていくことにしましょう。例えばこんな状況です。
上のグラフについて説明します。
1枚目のグラフは、2009年から2016年までの10年債利回りとS&P500をプロットしたものです。逆に2枚目のグラフは、2020年5月以降の10年債利回りとS&P500をプロットしたものです。どちらを見てみても、S&Pは上昇していますが、金利は上昇している場合もありますが、下落している場合もあります。
残念ながら、S&P500が長期で下落している局面が中期で見つけられなかったので、金利との比較はできませんが、上のグラフによって、金利が上がろうが下がろうが、株価には大きな影響はないということがわかるのではないでしょうか?
そこで、次に金利が上がるか下がるかということと、株価が上がるか下がるかの4パターンに分けて、それぞれがどのような状況であるのかということを考察していこうと思います。
金利が上がり、株価も上がる場合
まず最初に金利も株価も上がる場合を考えていきましょう。この場合はいたってシンプルです。景気後退懸念が小さくなっていく局面です。景気後退局面が高まってくると通常債券価格が上昇するため、金利が下がります。
しかし、景気後退の懸念が小さくなってくると、それに伴って、安全資産である債券よりもリスク性資産である株式のほうが選考されます。それに伴って、債券が売却されて、株式が上昇します。だからこそ、債券の利回りが上昇すると同時に、株価が上昇するようになります。
このような流れは比較的長期の傾向になります。
金利が上がり、株価が下がる場合
次に、金利が上がり、株価が下がるケースを紹介します。このケースは、中央銀行が行き過ぎたインフレを抑制するために、政策金利を上昇させたケースにこのようなことが起こります。
このような場合に、投資家は株式等でリスクを負わなくても安全資産である程度のリターンを期待できると考えるため、株式での運用から債券での運用に切り替えるようになります。
このように、中央銀行によって政策金利が上がった場合には、それに伴って株式で運用するメリットが小さくなり、株価が下落するようになります。
この流れは比較的短期の短期の傾向になります。
金利が下がり、株価が上がる場合
次に、金利が下がり、株価は上がるケースを紹介します。このケースは、中央銀行が景気後退局面において、さらに景気が後退することを防ぐために、金利を下げたケースにおいて、よく起こります。
このような場合に、投資家は安全資産である債券で運用を行うよりも、リスク資産である株式で運用を行う方が期待リターンが大きなるため、株価が上がります。
このように、中央銀行によって政策金利が下落した場合には、それに伴って株式で運用するメリットが大きくなるため、株価が上昇するようになります。
この流れは比較的短期の傾向になります。
金利が下がり、株価も下がる場合
最後に、金利も株価も下がるケースを紹介します。このケースは景気に大きく影響を受けます。景気が後退するという懸念が大きくなると、安全資産へ資金が流入するので、債券価格が上昇し、金利が下落します。
また、景気が後退するという懸念が大きくなると、企業も利益を上げることが難しくなると想定されます。それに伴って、株価も下落していきます。
この流れは比較的長期の傾向になります。
金利と株価は景気に影響を受ける
以上で、それぞれのケースでの株価と金利の状況を説明しました。お分かりいただけたと思いますが、株価と金利は短期的には逆の相関関係があると思いますが、長期的には正の相関関係があります。
また、株価と金利はお互いに関係があるというよりも、景気に影響を受けて動くことがわかると思います。
まとめ
今回の内容は以上です。最後まで読んでくれてありがとうございます。株価と金利は確かに影響はありますが、そこを見て上昇をするか下落するかを考えるには、材料としては不足しています。
それよりも景気の動向などを見て将来的な株価などを考える方がよっぽどか効率的ではないかと思います。
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併せて読みたい記事
債券の金利と政策金利を混同されている気がします。
ご指摘ありがとうございます。株価と金利が逆の動きをした場合に、長期金利がどのような意図で変動したのかを考えることが記事を書いたときの当初思いつかなかったので、政策金利に置き換えて書いてしまいました。
ちなみに、yyさんは、株と長期金利が逆の動きをする場合には、例えばどのようなシナリオがあると考えられますか?