オーストラリアの経済情勢

みなさん、こんにちは! マネーの育成術へようこそ!
この記事を開いてくれてありがとうございます。

さて、今回の記事ではオーストラリアの経済情勢について、投資家的視点になって書いていきます。オーストラリアの資産というと、一昔前は、豪ドル債券による運用というものが非常に人気でしたよね。アメリカよりも高い金利がつく場合もありましたし、また、アメリカよりも政治的な面で安定しており、非常に人気な投資先でした。近年では、10年債利回りが低下気味にあるので、そのポジションはアメリカにとって代わってしまったと思います。また、コロナウイルスの感染拡大第1波が到来したときには、一時的に70円台中盤から60円台前半にまで円高が進みましたが、第1波の落ち着きを見せ始めてから一気に元の水準近くまで回復しました。このようにオーストラリアにおける資産運用の時には大抵債券での運用に目が向くことが多いですよね。しかし、資産運用の手段というものは債券のみで行うわけではありません。為替レートの変動が損益となるような債券運用以外にも様々なものがあります。

そこで今回の記事ではオーストラリアの経済情勢について書いていきます。

さて、この国の経済情勢を説明していく前に、まずはこの国に対してどのようなイメージを持っていますか? みなさんがどんなイメージを持っているかどうかはわかりませんが、少なくとも私が持っていたイメージについはこんなものです。

①経済の大部分を石炭や鉄鉱石などの資源に依存しているのではないか?

②貿易の主要相手国が中国で内部の経済は外部との貿易に依存しているのではないか?

このようなイメージを私は持っていましたが、皆さんが持っていたイメージと似ていましたか?

 

ここからは、実際にデータを活用して本当にそのようなイメージがあっているのかどうかということを検証してみようと思います。今回使うデータは、OECDのHPに載っているデータと、外務省のデータをもとにして検証していきます。その時に様々な運用会社が提供しているレポートなども利用していきます。

 

①資源に依存した経済行動ではないのか? ということについて

オーストラリアは確かに資源大国です。石炭とボーキサイトが有名どころですね。グローバルノートによると、2019年時点で石炭の産出量は世界5位、そして、ボーキサイトに関しては世界1位の産出量を誇ります。ボーキサイトとは、アルミニウムの原料となる鉱石です。アルミニウムには、様々な特徴があります。株式会社ミヤキのHPによると、鉄よりも軽く、そして、鉄ほどに強い、そして、さびにくい。そして、電気をよく通すのに磁気を帯びない。根地をよく通すのに、低温にも強い。そのため非常に加工しやすいという点から、航空機や新幹線など様々な工業用品に使われている鉱石です。そのため、このボーキサイトという鉱石の価格は景気の影響を敏感に受けます。そのため、景気が悪い時にはアルミニウムの価格も下落して、さらに、景気を悪くするというスパイラル的な構造をしています。また石炭に関しても昨今の環境問題に対する意識の広がりから、需要が減少しつつあります。そのため、オーストラリアが資源に依存している国であるという場合には、景気に大きく影響される可能性があるために、場合によっては投資を避けた方が良いかもしれません。

さて、本題に戻りますが、実際にオーストラリアの経済はどのくらい資源に依存しているのでしょうか? レッグメイソンという運用会社のレポートによると、GDPに占める石炭やボーキサイトなどの鉱業資源の割合は約8%前後で、さらに、外務省のデータによると輸出額に対するこうした鉱業資源の割合は、約30%であることがわかります。確かに、外貨獲得のための貿易にしめる鉱業資源の割合は大きいです。しかし、GDPに占める貿易における鉱業資源の占める割合は、約2.4%程度であることがわかります。また、同じように資源国家であると言われているUAEのデータと比較してみましょう。UAEに関しては、あまり正確なデータは公表されていないので、正確性には欠けるかもしれませんが、2019年の国際通貨研究所のレポートによると、GDPに対するエネルギーの依存度は約40%前後であり、それに比べたら、経済的には資源に依存している国であるとは言えにくいと思います。

 

②オーストラリアの経済は貿易に依存しており、外部との経済によって国内景気が左右されるのではないかということ。

オーストラリアの経済は貿易に依存しており、外部経済の景気が悪くなることで、それが内部にまで深く影響をするのではないかという考えですが、上記の例で説明しましたように、資源輸出の国内景気への影響は限定的です。確かに、オーストラリアの主要貿易相手国は中国であり、その貿易額は全体の30%強を占め、そして、2位の日本に対しては10%弱なので、一国に対して貿易を依存しているという構造はその通りであると思います。ただ、その一方で経済構造を見ると、資源依存の経済行動から内需主導型の経済行動に変わりつつある経済行動であるように思えます。次にオーストラリアの内部経済について書いていきます。

オーストラリアは、もともとイギリス系の移民が作った国です。国の成り立ちについては比較的アメリカと似ている部分があり、アメリカ同様移民政策に成功している国です。もともと人口が少ない国であるために、今後の人口増加率は大きくなる可能性も高くなっており、今後のGDPの伸び率も大きくなると考えられます。GDPは、国内の総生産という項目なので、人口が増加すれば、自然とGDPも増加します。ただその移民が優良な移民でない場合には、GDPの増加はただ人口が増加したからという理由のみになってしまいます。しかし、オーストラリアの強いところはこうした移民の多くが技能移民であるという点です。技能移民とは、特定のスキルや資格の保有者、あるいは、熟練技術者のことを指しますが、こうした移民が全体の過半数を占めます。さらに、GDPに占める教育投資の割合も大きく、日本が3%であるのに対して、オーストラリアは6%程度あります。そのため、労働人口の割合はアメリカと同等の水準で推移しており、大きな振れ幅がないまま順調に右肩上がりになっています。日本の場合には、1990年代のピークにそこから急速に右肩下がりになっており、最近世界2位の経済規模になった中国に関しては、2010年をピークに大きく減少する予兆を見せています。

中国が世界2番目のGDPの高さを誇るようになったのは、この人口の増加に要因があります。確かに、各種IT分野の成長も著しいですが、人口増加率が非常に大きい国であったために、GDPの成長率が非常に大きかったです。しかし、こうした国には見落としがちな面があります。それが、「中所得国の罠」です。新興国が先進国の仲間入りをするためには、国内の一人当たりのGDPの大きさが大きく改善する必要があります。日本は一人当たりのGDPが非常に低いと言われていますが、どのくらいか知っていますか? 日本の一人当たりGDPはだいたい40,000USDで、それに対してアメリカとオーストラリアは同等程度で60,000USD。では、中国はどのくらいなのかというと、10,000USD程度です。日本の4分の1以下です。つまり、中国が世界第2位の経済規模を有するようになったのは、単にもともと人口が非常に大きかったところに、外国からの技術輸入による急な成長で一部の地域が非常に成長したことにすぎません。内部経済全体で見ると非常にアンバランスで、こうした成長が内部全体にいきわたらなければ、今後の成長は難しいかもしれません。ましてや、現在中国は長年の一人っ子政策を中断したばかりで、このツケがいずれ誰も見たことがない大きな形となって表れるはずです。

さて、ここまでで、オーストラリアの経済を人口という視点で見てきましたが、次に経済という点で見てみましょう。経済という点で見ると、オーストラリアは200年初頭から一貫して金利の低下が進んでいます。さらに、移民政策の成功もあって2008年のリーマンショックの時に各国が軒並みGDPの成長率がマイナスを記録する中でもプラス成長率を記録しています。また、今後もそのような成長は継続していくと考えられます。

そして、内部経済においても、アメリカや日本と比べると、国内市場における企業間競争が穏やかです。各種分野における上位3社の市場シェアを比較すると、アメリカや日本では、3割程度にしかならない場合でも、オーストラリアでは上位3社が過半数の市場シェアを占めている分野が多くあります。このように市場における少数の企業のプレゼンスが高いことは、市場の安定化に働きます。というのも、競争が減しい場合には、様々な企業が不当な価格競争に追い込まれてしまい、財務体力を低下させてしまいますが、競争が穏やかな場合には安定的収益を確保しやすく、財務的に安定性が高くなります。このため、オーストラリアの企業はアメリカや日本の企業と比べると配当利回りが大きくなっています。

また、オーストラリアの内需主導型の経済構造をしているエピソードとしてもうひとつ面白いものがあります。オーストラリアはもともとイギリスの移民が作った国なので、本国同様コーヒー文化が根付いています。しかし、オーストラリアにはスターバックスコーヒーが1店舗もありません。もともとなかったわけではありません。2008年までには84店舗を展開していたのですが、損失が重なってしまい、2014年までには完全撤退をしました。このように、オーストラリアは他の国と比べると非常に外資参入のハードルが高く、国内企業によって成長し、国内企業の雇用によって守られるという、良い循環が生まれています。そのため、内需主導型の国であると言われるのです。

 

 

 

まとめ

オーストラリアは昔は資源依存の経済構造を有していましたが、現在は内需主導型の経済構造に移行しているようです。では、実際の投資対象としてはどうなのかということです。個人的な意見ですが、オーストラリアの株で運用を行う場合には、資産運用という場面では非常に効果を発揮すると思います。市場が安定しているということは、株価が安定しており、他の国と比べると、市場の不確実性が小さいということです。また、高配当を狙うことができるので、給与収入などの定期収入が小さい資産運用層にとっては、この高配当は定期収入として非常に魅力的なものであると考えることができると思います。
その一方で、資産形成層にとってはあまり向かないと投資先であると思います。これは市場が安定しており、競争が穏やかであるという点の影響力が大きいです。資産形成層における投資の目的は、長期のキャピタルゲインを狙うことが多いと思いますが、市場が安定しているということは、その目的を邪魔しかねません。また、高配当という点も資産形成には邪魔な点でしかありません。配当金として受け取ってしまうと、その分の投資機会を失ってしまうからです。再投資すればよいではないかと考える方もいると思いますが、その場合にはインカムゲインに税金がかかってしまい、再投資の邪魔をしてしまいます。なので、資産形成を目的にした場合には、このオーストラリアの株式での運用は向かないかもしれません。
また、この理由以外にもオーストラリアの株式市場における分野ごとの時価総額のシェア率を比較すると、今後の経済はまだ内需主導型への移行に時間が掛かるのではないかと考えられます。というのも、この国の時価総額のシェア率を見ますと、金融セクターとエネルギーセクターで過半数を占めています。そのため、今後この両セクターのシェア率が減少していかない限りは、資産形成を目的とした運用には向かない投資先であると考えられます。

 

 

今回の内容は以上です。最後まで読んでくれてありがとうございます。
Twitter(@kaikitouwa)をやっていますので、フォローしてもらえれば更新を見逃しません。