みなさん、こんにちは! ためにならないFINANCEにようこそ!
この記事を開いていただきありがとうございます。
以前外貨建保険に関して紹介しました。実は、全国的に見ると外貨建保険に関する苦情は増加しているようです。その原因は、この外貨建保険というものがわかりにくいということがあります。どのようなことがわかりにくいのかというと、
①元本保証をしてくれるのはあくまで外貨建資産に対してである
②中途解約時には市場価格調整が適用されて、解約代金が変動すること
この2点が最も苦情につながる原因であると言われています。
さて、今回の記事では、この2番目の方の「市場価格調整」に関してまとめていきたいと思います。
Contents
〇市場価格調整とは何なのか?
市場価格調整を簡単に説明するとするとこうなります。
「金利の変動によって、債券価格が変動すること」です。
どう変化するのかというと、金利が上昇すると、債券価格は下落し、金利が下落すると債券価格は上昇するという、逆の関係性があります。
〇なぜこのような動きになるのか?
このような動きになるのはなぜなのか、順を追って説明していきます。ここでは簡略化のために1年満期の債券として考えていきます。
ここでAさんは、年率2%の債券を持っていたとします。債券は通常満期まで持てば額100円で償還されます。なので、1年後の満期には利息の2%を含めて、102円で戻ってきます。しかし、満期まで待たずして途中でAさんはお金が必要になってしまって、その持っていた債券を売却しなければならなくなりました。この時の金利が債券取得時の金利と比べてどうなっているか(上がっているのか、下がっているのか)によって、売却価格が変動してきます。
①売却時に、当初よりも金利が上がっている場合
Aさんが債券を売却しようとしたとき、市場に流通している債券の金利が3%だったとします。一方で、Aさんが持っている債券は金利2%です。仮に取得価格が同じだとして、皆さんだったら1年後に3%の利息を受け取れる債券と、2%の金利を受け取れる債券、どちらを購入したいですか? 答えは決まっていますよね。価格が同じなら、1年後に3%の利息を受け取ることができる債券を購入するはずです。つまり、市場に流通している債券の価値とAさんが持っている債券の価値を比べた時に、Aさんの持っている債券の価値のほうが低いということを指します。しかし、そうなってしまうと、Aさんは結局持っている債券を売却することができません。
そこで、市場で流通している債券とAさんが保有している債券の価値を同等にするためにはどうすればよいのでしょうか? 答えは簡単です。その債券価格を下げるのです。例えば、99円に下げたとします。その時の債券を詳しく見ていくと、その債券は、99円で取得することができ、そして、満期時には額面通り100円で償還されるとともに、利息の2%である、2円を受け取ることができます。満期時に102円を受け取ることができる権利はそのままですが、取得価格を低下させたことで、最終利回りを上げることができます。
この場合、99円で取得して、満期時には102円受け取ることができるので、
(102-99)/99=約3%です。
それに対して、額面100円のままでは、
(102-100)/100=2%のままです。
このように、金利はそのままでも取得時の価格が変わることで、利回りを変動させることができます。これが、市場価格調整です。
②売却時に、当初よりも金利が下がっている場合
次に金利が下がっている場合ですが、金利が下がっている場合には、上記の金利が上がっている場合とは真逆のことが起こります。仮に、金利が1%に下落している場合、1年後に利息2%を受け取ることのできる債券は貴重です。そのため、その債券は価値が高く誰しもがほしいはずです。だからこそ、債券価格を上げて、他の債券と最終的な利回りの違いをなくして価値を他の債券と同等にするのです。
ところで、上記の説明の中で、「債券の価値」という言葉を使っていますが、そもそも債券の価値とは一体どういうことなのでしょうか? 債券はその特徴上、満期まで保有していれば満期時に額面通り償還されることは保証されています。そして、金利も発行時のものが満期まで継続します。このような特徴があるために、債券投資において注意しなければならないことは、利回りです。そして、債券の価値とは「利回り(イールド)」です。
債券投資は基本的に短期の値上がり益狙いをすることは少ないです。満期まで持つことで、元本と利息収入を受け取るという、インカムゲイン狙いの投資が基本です。
要するに、債券は満期が存在し、満期時に額面で償還されることは保証されているけれども、だからこそ、途中でその権利を放棄すると、一定のペナルティが課せられます。それが市場価格調整なのです。
市場価格調整の概算について
以上の話では市場価格調整について、単年分の話しかしていません。しかし、債券運用特に、外貨建て保険は期間が10年や場合によっては20年という非常に長い運用期間になります。厄介なのは、運用期間が長いほど、金利の単位当たりの値動きが債券価格に反映される値動きが大きくなります。
そのため、簡単にどの程度値動きするのかということを概算できるようにしておくと便利です。もちろん、概算であるために外貨建て保険が契約に定めている市場価格調整とは一致しません。
・金利は増減した時の値動きを考えましょう。まずは、クーポンレート3%で残存期間10年間の債券をパーイールドで購入した場合、今後期待される名目キャッシュフローは、
3円 × 10年 = 30円
・そののち、金利が1%上昇したとしましょう。この時、クーポンレート4%の残存期間10年のパーイールド債券の名目キャッシュフローは、
4円 × 10年 = 40円
・上記の二つの債券が同一の発行体で同一の年限であるとき、両債券の抱えるクレジットリスクは同一であるため、二つの債券の将来キャッシュフローは同一にならなければなりません。そのため、金利が上昇する前の債券について、価格が下落しなければなりません。
つまり、クーポンレート3%の債券については、市場価格が10円下落することで、将来のキャッシュフローについて、クーポンレートの3%のほかに償還時のキャピタルゲインが10円分発生するために、将来の名目キャッシュローが一致します。
今度は逆に、市場金利が1%下落した場合を考えてみましょう。クーポンレート2%の残存期間10年のパーイールド債券の将来名目キャッシュフローは、
2円 × 10年 = 20円
となりますが、上記の例と同じように、同一発行体の同一年限の債券については将来キャッシュフローが一致します。このため、クーポンレート3%の債券については、市場価格が10円上昇します。これによって償還時に―10円のキャピタルロスが発生することで、利回りが一致します。
もちろん、これはあくまで概算です。本来的な計算方法は将来のキャッシュフローの割引現在価値の合計によって算出をするので、変動レート×残存期間という単純な計算式だけでは求めることはできませんが、概算とはしては非常に効率的ではないでしょうか?
特にこの記事を更新している2023年1月付近であれば、米国金利がターミナルレート付近なっていると考えられるような状況においては債券運用をすることは満期保有目的というよりも長期保有の債券を保有し、レートが下がるタイミングで売却するというのは非常に効率的ではないでしょうか?
今回の内容は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございます。
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